コーヒー旅行記 「2019年 コロンビア」



コーヒー旅行記「2019年 コロンビア」

 

今回の北部sierra nevada(セラネバダ=雪に覆われた山脈の意)の「val ledupar(セサール)」は初めての訪問地です。当店で販売している「JASコロンビア・カンクワモ」の故郷です。
カンクワモというのは、セラネバダに住む、先住民のカンクワモ族由来のネーミングで、 是非とも訪れたいエリアでした。それ以外の訪問地も、ナリーニョ(Pasto)、ウィラ(san agustin)と、私にとってとても魅力的なコーヒー生産地でした。
缶コーヒーのエメラルド〇〇〇とか、サンタマル〇とか、普段目にするコーヒー関連商品のネーミングにコロンビアコーヒーをイメージさせるものが多いのですが、お客様にとっては、近くて遠い生産地です。また、以前からブレンドに欠かせないコーヒーでもあります。
今回のアテントをいただいたカラー オブ ネイチャー(Colors of Nature)は、コロンビアを拠点に良質なスペシャルティーコーヒーを、取り扱うサプライヤーのフェリペさん。自社農園も経営しながら他生産者の生産、生活、設備、研究サポートなどを実施しています。
同社は、元々貧困や違法作物、戦争等の影響を受けた地方エリアの人々を支援する目的で設立されており、現地の通常流通価格よりも高値で買い取り生産者を支援しています。しかしながら品質も妥協せず、最新の研究等で判明した知識などは生産者と共有するなど、常に品質向上に向けて生産者たちとコミュニケーションを取ることに努めています。
その成果として今年度、コロンビア カップ オブ エクセレンスにおいて上位入賞コーヒーに6アイテムが入ったというニュースにも驚いたのであるが、今回のミッションで再度購入させていただいた「エル・エンカント農園」のコーヒーが入賞したのも、大変喜ばしいところです。
今回の道中もフェリペ氏が行く先々には、多くの人が集まり笑顔が溢れていました。彼が生産者を大切にし、彼らとしっかり信頼関係が築けていると感じられたことでした。

 

【ナリーニョ】

 

●Villa Loyola「Narino(ナリーニョ)」

 


自家焙煎をはじめて12、3年ほどたったある日、(27、8年程前)「コロンビア・ナリーニョ」に出会い、コロンビアと言えばナリーニョ、それ以外はコロンビアじゃないとまで思っていた時期がありました。
ところが、正直それ以降、残念ですが納得のできる「ナリーニョ」に出会うことがありませんでした。当時は、情報も自分自身の技量も無く、思い悩む日々・・・を思い出しました。今回の「ナリーニョ」では、「また使ってみたいなぁ!」と・・その当時の味わいをはっきりと思い出しました。
コーヒーのあと味というのを一番大切にしております。クリーンであり、甘味の余韻があるものを求めています。故のコロンビアの「ティピカ」ですが、「ナリーニョ」に求めるものは、深煎りにも耐えうる、ブレンドに使えるコロンビアです。
今回、ラスカノアス農園で頂いた一杯のコーヒーが、まさにそのコーヒーでした。今回は買い付けには至りませんでしたが、次回ロットに期待して、多少後ろ髪を引かれる思いの「ナリーニョ」でした。

 

●ヴィラロジョラ農園

 

 

最初に訪れたのはヴィラロジョラ農園です。コミュニティの代表であり、持続可能で環境に配慮した農園の運営と、コミュニティで収穫されたコーヒーのミル(コーヒーを加工処理する施設)の機能も有しています。
また、2008年のCup of Excellence(その年に収穫されたコーヒーの中から最高品質のものに与えられる名誉ある称号)で優勝した実績のある農園です。教会の神父であり研究者でもありました。
コーヒーの加工処理は、最新の設備が揃っていました。また伝統の竹を使った建築物の乾燥場も労働環境に配慮されており、風通しがよく、コーヒーの乾燥ムラが起こらないように工夫されていました。
今回のミッションで初めてとなるカッピングを行いました。今回宿泊させていただいたのは修道院で、100年以上も経つ建物です。

 

●ラスカノアス農園

 

 

アンデスの壮大な景観を楽しみながらSan Jose de alban(サンホセ・アルバン)に向かいます。
Las canoas農園に到着、すぐにAAA組合長のイワンさんのご自宅で、自家製のコーヒーとオレンジジュースとギョウザのようなスナックを出していただきました。コーヒーは鍋に入れた湯にコーヒー粉を直接入れて抽出し、ネルフィルターで濾す方法です。一般的に浸漬法と言われている抽出方法です。(以前は、喫茶店でも普通に行われておりました。)
イワンさんの畑で穫れたコーヒー、これが美味しいコーヒーです。ご自宅で消費されるコーヒーですので、出荷用と違うと思うのですが・・・環境もさる事ながら、大切に育てられたコーヒーは間違いなく、ひととなりでしょう。
しかし残念なのはオフシーズンで、次回のサンプル待ちの状態だということです。
農園の視察終了後、AAA(アルバン、アグリカルチャル、アソシエーション)組合事務所にも案内していただきました。

 

●ユーチュブ、ラスカノアス農園 アルトデラスエストレージャス(星の観える山)農園

 

 

農園主は元市長のリバルドさんです。美味しい昼食をいただき、農園のご説明をしていただきました。標高は2,200メートルほどあります。
そろそろコーヒーの生育の限界に近い環境です。昼と夜の寒暖差が大きく、雨も少ない土地ですが、谷を流れる霧に守られていると聞きました。 厳しい環境であるがゆえに甘味があり、濃厚な味わいのコーヒーが生産されているといわれています。

【ウィラ】San Agustin(サン・アグスチン)へ

 

 

 

San Agustinのコーヒーは品質が良いために、ほかのエリアよりも高値で取引されており、念願のエル・エンカント農園の訪問とカッピングができました。
また、今年のティピカ・コーヒー(ナチュラルとウォシュッドコーヒーともに販売中)は、スッキリとしていて、甘味があり、味わい深いコーヒーというのが、現地で確認できたのが最大の収穫でした。

 

●CON(Colors of Nature カラー オブ ネイチャー)倉庫

 

 

コロンビア各地から集まるサンプルの確認や保管、出荷前の商品の保管などを実施。 以前はパーチメントの乾燥や各種研究ラボの役割も果たしていたが、現在はその機能のほとんどは新しい研究センターへ移行しています。  

 

●Maria農園

 

 

先祖から受け継いだ農園を、現在は長女 マリアさん(アレハンドラアレハンドラ氏)が管理している農園です。  

 

●El Encant農園(エル・エンカント農園)

 

 

品種は主にティピカ、ブルボン。 当店人気商品の「エル・エンカント農園・ティピカ・ナチュラル」「エル・エンカント農園・ティピカ・ウォシュド」の農園です。
生産者はアソガード組合のリーダーである、ミゲル氏の父親ミゲル氏(同じ名前)です。 彼はティピカに強いこだわりを持っており、ミゲル氏(父)の父親もコーヒー農家で、彼は子供の頃からティピカを知っており、ずっとティピカが大好きでした。 そしてプロのコーヒー生産生産者になるのであれば、ティピカ種とブルボン種を栽培したいとの思いがありました。
ハイブリットのカスティージョなどと比べると、ティピカ種はサビ病などにも弱く栽培が難しい。 サビ病を完全になくすことは不可能であるが、肥料などで、コントロールしながら栽培しています。精選は現在自前では実施しておらず、Colors of Natureが、チェリーで買付けて精選を行っています。  

 

●La Cereza

 

 

かなり広い敷地があり、ラボや研究センターの役割も兼ねています。 精選場や発酵スペースの他に、コーヒーの栽培スペースやコンポスト作成場所、精選で使用した水の浄化設備 などもあります。また生産者が会議をしたり、宿泊したり出来るよう設備の増築をしています。  

 

●La Natura農園

 

 

・CONが所有する実験場的な農園。2021年より収穫に入る予定。
大自然に囲まれた自然と共生する農園であり、昔から受け継がれてきた大自然をそのまま残したいというFelipeさんの思いから、敷地内のほとんどが森林保護エリアとなっています。 森林保護エリアには湧き水の小川があり、タニワタリ、シダ類、着生植物など、大自然そのままの風景が広がっています。
コーヒーの栽培エリアにも、ハチや鳥のために、たくさんの花やとうもろこしが栽培されています。ピンクの綺麗な花を咲かせるシエテクロス。 この木は寒さから身を守る為に木の皮がどんどんはがれていくが、このはがれた皮が土壌に栄養を与え、コーヒーの品質にも良い影響を与えるとのこと。 また標高があり、非常に風が強いために森林エリアが防風林の役目も果たしてくれているようです。
実験的に、ゲイシャ種やウシュウシュ種、ティピカ種、ブルボン種などを栽培しており、隣接する他の農園では、ハイブリッド種が青々と生い茂り、La Natura農園は、 何度も枯れては植え直しを繰り返しています。農園管理を任されたミゲル氏さんも、何度も涙を流したとのこと。それでも美味しいコーヒーを作る為に今も諦めずにティピカ種などの栽培を続けています。
山頂近くには、森林エリアから運んできた自然の栄養分がたっぷり含まれた土壌が広がるエリアがあり、現在新たにティピカとブルボンを栽培中。 肥沃な土壌で育ったティピカ種は素晴らしい味わいのコーヒーになることが想像できます。最初収穫されるティピカ種を予約した次第です。  

 

●La Miel農園

 

 

農園名のMielはスペイン語ではちみつの意味があり、初めて収穫されたコーヒーが非常に甘かったことからこの名前をつけたそうです。特に小ぶりのモカ種が美味しいそうです。
この農園では、コーヒーの木と木の間隔を広く取っており、それぞれにしっかりと木に栄養が行き渡るのではという仮説を実践しており、間隔を2.5mもあけています。 また、密集した場合根元近くのコーヒーチェリーが収穫しきれず、汚染の原因となる可能性もあり、それを避ける目的もあると聞いています。隣の農園と比べると、スカスカな印象を受けるが、いずれこの方法の正否がわかるでしょう。

・カッピング(Natural)
Naturalアイテムを2日に分けて13ロット実施。
NaturaやMielのアイテムもカップ。特にMielのゲイシャはパナマゲイシャに見劣りしない特徴のあるカップでした。 全体的にコロンビアNaturalはフルーティーさだけでなく、ボディも感じられるカップです。  

【セサール県】Sierra Nevadade Santa Marta

 

●Chemeskemena村

 

  

 

このエリアも2008年頃まで土地の略奪を目的とした武力衝突がひどかったエリアです。 この辺りに住んでいた先住民4つの部族のうち、カンクワモ族は自分達の土地を守ろうとして命を落とされた方が非常に多かったそうです。
CONは戦争で傷ついたこの辺りの地域の人々を支援すべく、カンクワモ族の生産者組合であるASOPROCAN組合やその他団体と共に活動しています。 この村にはカンクワモ族1万8千人、約800の家族が住んでいます。  

 

●ASOPROKAN組合

 

 

組合リーダー、ソロンさん。
自然の森林の中で化学薬品、化学肥料を一切使用せずにコーヒーを栽培しています。
先住民の方々は、自分たちは自然の中に生まれた存在であり、自然の中にうまく生きていかないといけないと考え、自然や他者との調和が大事であると考えています。  

 

●ラマカナ(コーヒー栽培エリア)

 

  

 

標高が、約1800~2000mあり、当店オリジナルの「ワイルド・ティピカ」は、その自然の森林の中、ラマカナと呼ばれるエリアで栽培されています。
同じシエラネバダ山脈でもカリブ海側と裏側では全く気候環境が異なっているようで、この場所はカリブ海から見るとシエラネバダ山脈の裏側に位置しており、空気は乾燥し気温は昼と夜との寒暖差が大きいです。 この寒暖差がこのエリアのコーヒーを特別な味わいとしています。
土壌に関しても自然豊かな土地で様々な植物が育ち、その腐葉土からなる有機質の豊かな土壌にも恵まれています。 また自然と一体化しているためほとんどのコーヒーの木が森に守られています。
ここにはCONから派遣された、品質管理者であるジェニフェル氏も駐在。このエリアのCONのアイテムについては全て彼女が品質を管理しています。 彼女はコロンビアで2人しか選出されないCOE上級審査員にも選出される程優秀なカッパー。彼女も昔ながらのコロンビアマイルドを醸し出すティピカが好きで、ティピカを守っていく事が大切だと考えています。
ASOPROKAN組合のブランド、’KUMA’とはカンクワモ族の言葉で「生きる力(生命力、活力)」という意味と聞いています。彼らは、シエラネバダ山は世界の中心であり、 神聖な場所でありエナジースポットであると考えており、シエラネバダ山のエネルギーをたくさん吸収して育ったコーヒーに、生産者である彼らの人々の幸せを願う想いも込められています。 このコーヒーを飲む時にはその瞬間だけ心配事や嫌な事は忘れて、心を開いて家族や愛する人達を思い浮かべて、ポジティブなイメージを持ちながら飲むと、自然エネルギー(KUMA)と繋がることが出来ると、ソロン氏が教えてくれました。  

 

このページのトップへ戻る