コーヒー旅行記 「2016年コスタリカ・ミッションレポート」

 

中米コスタリカ

3月6日から3月11日までコスタリカに出掛けておりました。他国の産地と違いアクセスが良いこと、またコスタリカ国内での移動を考えても、3日もあれば主要な生産地域、ウエストバレー、セントラルバレー、タラスは充分に廻れると考えて、計画していただきました。

●東京成田~ヒューストン        11時間40分。
●待ち時間               約4時間、
●ヒューストン~コスタリカ・サンホセ  3時間47分

中米コスタリカは、パナマとニカラグアに挟まれた位置にあり、太平洋とカリブ海にも面しています。日本の1/7の面積、そのうち1/4が国立公園や自然保護になっており、エコツーリズム発祥の地、観光立国であります。軍を持たない国でも有名です。シーズンには多くの観光客の訪れる多くの観光スポットが点在します。治安も中米の中でもトップクラスです。

また、コスタリカは1800年代初頭から、200年以上コーヒーを生産しており、150年にわたって国の基幹産業になっております。コーヒー生豆はgrano de oro(金の豆)と呼ばれています。コスタリカ・コーヒー機関という業界の統率組織が1962年に設立され、生産者、中間業者(ミル)、輸出業者の間の対等な関係を指導しています。また、1989年からロブスタ種の栽培を禁止している国です。

※ロブスタ種は、生豆の種類で、カフェ カネホーラと言われています。
原産地は中央アフリカで、凡そ100年ほどの間に世界のコーヒー産地に広がりました。
カフェインの含有率が高く、比較的病害虫にも強く、低地でも育つため大量に生産されています。味はアラビカ種(通常のコーヒー)に劣ると言われていますが、個人的には好きなコーヒーでりあるブレンドの隠し味的に使っています。

今年の収穫は例年より遅いらしく、カップのタイミングもちょうど良かったと思っています。コーヒーの収穫は標高の低いところからスタートします。つまり、良質と言われているコーヒーは標高が高いところで採れるため、おおよそ、標高の低い地域にある農園から収穫がはじまります。通年であれば収穫は終わり、カッピングをするだけの日程ではありましたが、農園の収穫風景も垣間見ることができ、テンションが上があがるミッションにもなりました。

素晴らしい農園と素晴らしいキャラクターのコーヒーに出逢えたことが私にとっての収穫ではありますが、こと細かにスケジュールを組んでいただき、素晴らしいアテンドをしていただいたWATARU株式会社さんに感謝申し上げます。

マイクロミル

先ず、Exclusive coffee社(エクスクルーシブ・コーヒー)でのマイクロミルなどの説明とカッピングを行いました。
ドライミルであり輸出業者でもあるこの企業は、多角的に農園指導も行っており、世界で最も注目されている企業の一つです。マイクロミルでの生産工程、或はプロセス(ハニープロセス)などを、カッピングを通して検証しており、その情報の蓄積を農園へフィードバックしている企業です。

マイクロミルについて

マイクロミルとは、つまり「小さいウエットミル」 (中にはドライミル(脱穀・選別・袋詰め設備)を備えているマイクロミルもあります。)
コスタリカのコーヒーは
(1)収穫後そのまま乾燥させる「ナチュラル」
(2)収穫したコーヒーチェリーを果肉を除去した後、ミシュレージ(粘液質=ハニーと言われているところ)を専用のマシンと少量の水で洗い落した「ウォシュド」=「ホワイトハニー」とも言われています。

ミシュレージ(ハニー)の残す量によって「イエローハニー」「レッドハニー」「ブラックハニー」「ゴールドハニー」と分けられていますが、現在のところしっかりとした基準は無いのが実状ですが、この方法によって糖質を含んだミシュレージの香りが豆に移り、豆が本来の持つ香りに加えて芳醇な香りを持ったコーヒー豆に仕上がります。
マイクロミルとは、収穫後、パーチメントまで(ハニーの状態にできる)設備を持った農園のことで、世界でも注目されております。

マイクロミル革命とは?

マイクロミル革命とは、現地でMicro Mill Revolutionとよばれているものを和訳したもので、なぜマイクロミルが「革命」なのか、その背景から・・・

コスタリカのコーヒー産業の一般的な流通では、生産者は農協や集荷業者、輸出業者に「コーヒーチェリー」を売ります。農家や輸出業者は、集めたチェリーを自社の巨大なウエットミルに持ち込み、水洗処理を行います。(同じ中米でも国によって一般的な流通形態は異なります。)

このルートでは、生産者は収穫後、すぐに手軽に収入が入りますが、チェリーの買い取り価格はあまり高くなく、収穫労働者への賃金を払うと手元にほとんど収入が残らないこともあるそうです。また、チェリーの品質や細かい標高の違いによる品質の違いは買い取り価格にはあまり考慮されないようです。

そういった中で、特に標高の高い農園の生産者や在来品種(ブルボン、ティピカなど)の生産者は、生産量も少ないため、不利な状況に置かれていました。コスタリカは、中米の中では人件費の高い国の一つで、そうした農家、農園はせっかくのポテンシャルが全く生かされず、むしろ経営が危ぶまれる状況に置かれていました。そこで生まれたのが、「マイクロミル革命」です。

このような状況を打開するために、生産者自身(家族や親族、グループ)で、小規模なウエットミルを作り、栽培から水洗処理、乾燥まで一貫して、高品質なコーヒーを高い価格で売ろうという「マイクロミル」という考え方が2000年代前半に生まれました。

ウエストバレーのエルパスやエルサル、セントラルバレーのブルマス、タラスのカンデリージャやドンマヨなどが、「マイクロミル」のパイオニアです。

マイクロミルでは、従来の大規模ミルになかった「ハニーコーヒー」(ブラジルのパルプドナチュラル)という新しい生産処理が採用され、新しいコスタリカ・コーヒーの顔として、各消費国のバイヤーにすっかり浸透しています。
単に変わったものを取り入れるのではなく、アフリカンベットやビニールハウスパティオなど、より良い乾燥のための施設を取入れたり、サンプルロースターを導入して自らカッピング技術を習得し、品質管理や生産方法のフィードバックを行うなど、品質ベースの綿密な商品づくりが行われるようになりました。

2000年代は、日本国内では、2003年にSCAJ(ジャパン スペシャルティー コーヒー協会)が誕生するなど、まさにスペシャルティーコーヒーが消費国で認知され伸び始めた時代。日本でも世界でも、品質の高いコーヒーを求めるロースター、自家焙煎店、消費者が増え、2007年にはコスタリカで、COE(カップ オブ エクセレンス)が開催され、この流れの中で、「マイクロミル」の数は増えていきました。

マイクロロットとは

マイクロロットとは農園・品種、生産工程(ナチュラル・ハニー・ウオシュ)を特定した少量のロットです。(従来の取引単位が20トン近いコンテナ単位だったのに比較して、少量という意味です。)

品種は、ビシャロボス(ティピカ系)やビシャサルチ(ブルボン系)など、コスタリカ独自の品種や、標高2000mに近い農園では、カトゥアイという品種が適しているようです。

ゲイシャやケニアなども実験的に採用されています。最近では、ダブルウォッシュやブラックハニーなど様々な生産処理方法が採用されています。コスタリカ1か国だけでも、様々な香味が楽しめるようになってきました。

カッピングは、2テーブル行いそれぞれに10アイテムのサンプルがあります。すべてマイクロロットのナチュラル、ウォシュド、ホワイトハニー、イエローハニー、ブラックハニー、ゴールデンハニーです。2つのテーブルで一番気にいったコーヒーの農家を訪れ、買い付ける、というミッションです。

※ナチュラル、ウォシュド、・・・ハニーというのは上記に説明をしましたが、生産処理方法で、収穫からパーチメントになるまでの工程方法の名前です。それによりネーミングが変わります。

訪問させていただいた農園

Vista AⅬ Valle Fidel BH ・・・ビスタ アル バジェ

Vista AⅬ Valle Fidel BH(ビスタ アル バジェ)

Fidel,la Casaフィデル農園
標高は1500~1700m
Oldemar Arieta オルデマイル・ アリエタさん
2013年にCOE(カップ オブ エクセレンス)優勝
今回のカップも非常に洗練されている印象でした。

◎予約を入れました!

プロセス:ブラックハニー
※COEとは 
最高品質のコーヒーにのみ与えられる栄誉ある称号です。
この称号は生産国ごとに非常に厳しい審査会を経て、
その年に生産された最高のコーヒーに対して与えられます。
http://www.specialty-coffee.jp/about/cup-of-excellence
(WATARUさんのホームページより)

SUMAVA ・・・シュマバ

SUMAVA(シュマバ)

Exclusive Coffees社長のフランシスコ・メナ氏によって運営されているミル。
標高 1650~1720m
ウエストバレーに在り、今年で2年目の新しい農園とミルです。
コーヒーの収穫後の工程をみせていただきました。

Jardin de Aromas・・・ハルディン・デ・アロマス

Jardin de Aromas(ハルディン・デ・アロマス)

セントラルバレー・アラフェラ地区
キサラ農園
標高 1375m
コスタリカの中央部首都サンホセにほど近いセントラルバレーにあります。 
Carole Zbinden カロルス・ピンディンさん、スイス人の女性オーナーです。
ミルのファサードは美しい花々が咲き誇っており、清潔感のある農園でした。

Verde Alto・・・ベルデ・アルト

Verde Alto(ベルデ・アルト)

タラス・サンパブロ地区
標高 1800m
Juan Cordero ファン・コルデーロさん
研究熱心な方で、水を使わずに果肉除去を行うマシンに
チェリーを入れることが出来る改造を施しておりました。
味が薄まるからであるということです。

Don Oscar・・・ドン・オスカル

Don Oscar(ドン・オスカル)

Monte la canet農園 Aguacate区画
標高1600~1900m 
Alejandro Solis アレハンドロ・ソリスさん、 
カッピングをした全員が唸ったコーヒーです。
「芳醇な・・・」というのがピッタリのコーヒーです。
素晴らしい香りと甘味が特徴のコーヒーです。
COE上位に入ってもおかしくないと感じました。

◎予約を入れました。

到着が待ち遠しいコーヒーです。
プロセス:イエローハニー

Sol Naciente・・・ソルナシエンテ

Sol Naciente(ソルナシエンテ)

Luis Alturo Bonilla Chacon  ルイス・アルトゥーロ・ボニージャさん
El Cedral農園
標高1700~1900m
新規開業マイクロミルです。自然公園の中にある農園と言ったところ。
非常に環境の良い 農園です。
レインフォレスト等認証取得しておりました。
ゲイシャ種も植えており甘い実を付けて おりました。
収穫もオーナー自ら参加いただき良い写真が撮れました。

Grantos De Altura Del Ortiz・・・グラニートス・デ・アルトゥーラ・デ・オスティス

Grantos De Altura Del Ortiz(グラニートス・デ・アルトゥーラ・デ・オスティス)

オマール・カルデロンさん一家
EL Ortiz 2000 オルティス2000農園
標高2000m
コスタリカのスペシャルティーコーヒーの大産地であるタラスエリア。
その中でもDota(ドタ)は、以前から良質なコーヒーの採れる産地として有名でしたが、
2011年、2014年とCOEの優勝農園が出ております。
みずみずしい透明感のあるフルーツを思わす風味が特徴的で
近年特に注目を集めています。
今回も今まで味わったことのない風味のコーヒーに出会いました。
オマール・カルデロン夫婦とその娘3姉妹による家族経営の農園です。
今回のナチュラルは三女のジョイスさんのプロデュースによるもの。

◎予約を入れました!

到着が楽しみです。
プロセス:(1)イエローハニー (2)ナチュラル

LA Lia・・・ラ・リア

LA Lia(ラ・リア)

Luis Alberto Monge/Oscar Monge ルイス・アルベルト・モンヘ/オスカル・モンヘ
Dragon ドラゴン農園
2015年COE3位、真面目で一生懸命が伝わる方でした。
訪問させていただいた農園は新しい農園で、
色々な品種のコーヒーが山の凄い傾斜に植えられておりました。

新しいコーヒーの発見と可能性

今回3日間の滞在でしたが、実りの多いミッションになりました。

日本のこれからの農業にとって良いお手本になるのではと思うマイクロミルの取り組みです。農業だけではなく全ての事に通じることなのでしょう。それぞれが、試行錯誤を重ねてチャレンジする。 一瞬のチャンスを逃さない。そしてマイナスをプラスに転じる。そこには、必死さと爽やかさが同居していました。

新しいコーヒーの発見と可能性を体感いたしました。

この秋が楽しみです。

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