2010年9月 初めてのブラジル旅行記

CARMOCOFFEES (カルモコーヒー社)

<訪問場所>

ブラジル連邦共和国ミナスジェライス州カルモデミナス。
サンパウロより東へ約250km人口1万人の町。
隣町は人口5万人で世界的に有名な取水地であり、観光地である“水の町サンロウレンソ”。
サンパウロ空港から約5時間バスに揺られてホテルに着いた。
日本からのフライト時間など合計すると移動だけで35時間以上経過していたが、何と言っても初のブラジル、疲れよりも「楽しみと期待感」でいっぱいであった。

<概説>

以前から取引のあるカルモコーヒーズ社はカルモデミナスの伝統ある農園の第4代目となる二人のコーヒー生産者ジャッケス氏とルイス氏により設立された。
きっかけは同地域のコーヒー生産者が国内の品評会において素晴らしい評価を受けていたことによる。
その地域の誇りと伝統を以て生まれた。会社の目的は彼らの高い品質のコーヒーを世界に送り届けること。
カルモコーヒーズ社の成功は小さい生産者と消費者を結んだことにある。
また優れた品質をもつ少量のコーヒーを市場に送り出したことである。
こうして得た信頼と生産者の動機付けがブラジルのまた世界中の焙煎業者やコーヒーショップに最高品質のコーヒーを供給できる会社に育て上げた。

<今後の取り組み>

・新評価制度の導入
農園の名前が独り歩きし、商品の価値を損なうことを防ぐため、新評価制度を来年から導入予定。
Micro lot (score89~)
AAA (score86~88)
AA (score83~85)
A (score80~82)
High Commercial (score77~79)

・完熟豆収穫の徹底
収穫の精度をより上げる為、中米などにならった手積み収穫を今年から始める。
コロンビアからの指導者を迎え、完熟豆のみを選択して収穫。
現時点では効率が悪くなるが、品質は良くなるだろうと。
従来の収穫方法だと一人200L/一日。選択的だと30L/一日。

・精選設備の充実
精選加工場をつくり、隣町からのチェリーの受け入れを始める。
出来上がった品質を生産者に見せ、希望者には指導も行う。

*現地感想*
ついにブラジル上陸。そして今回初の訪問地となったカルモデミナス。
想像していたよりも町は大きく、夕食の前に立ち寄ったカフェは大盛況でなかなか座れなかった。
夕食ではカルモコーヒー社のジャッケス氏とパウロ氏を囲み、珈琲話に花が咲いた。
ちなみにお二人とも私よりも年下らしい・・・。
そして待ちに待った現地初のカッピング、妙な緊張と期待感を覚えている。カップは全部で22種。
今回注目の一つであるCOFFEE WORKS契約農園ティジュコプレトのアマレロ(イエローブルボン)はさすがで“クリームのようなコクと落ち着いた甘さ”を感じた。
これが噂のティジュコか・・・。

 

ティジュコプレト農園:Fazenda Tijuco Preto(当社契約農園)

肥沃な黒い泥土だったことからこの名がついた。
農園主の「ブルボン好き」が起因し栽培されている約90%(180ha)がアマレロブルボンである。
特に黄色いブルボンを味覚においても好んでいる。それの年間平均収量は1350袋。
地理的に特に美味しいアマレロブルボンが栽培される地域は標高が1250mありCascalho(カスカ-リョ:石の一種)と呼ばれ特別扱いされる。
ILLYやBSCAまたフランスにおける品評会などで数多くの入賞を果たす。
カルモコーヒーズ社のジャッケス氏は同農園を栽培に対する意欲と技術や姿勢は域内一番と称賛する。
当社の契約農園として4年になるがその品質は毎年信頼のおけるもので、今回のカップにおいても「透明感のある酸」に加えバランスの良い「落ち着いた甘み」が非常に印象的であった。
コーヒー好きの常連様にも根強い人気のある珈琲である。「早くお店で提供がしたい!」そんな気持ちです。

*現地感想*
厳しい日程の中でなんとか訪問することができ、そして今回のミッションにおいても初めての農園となり、最も印象に残った当社契約農園ティジュコプレト。
広大な敷地に整然と並んでいるコーヒーの木々。園内の中心にある高台からの終わりのない景色。
“アマレロブルボン大好き”な農園主のコーヒーに対する情熱を直接肌で感じた瞬間だった。
あの時の感動は、今でも鮮明に記憶に残っている。農園主の姿勢は味に比例するのですね・・・。

 

サンタイネス農園:Fazenda Santa Ines

1979年にセルトングループにより新しく加わった農園。
今ではカップオブエクセレンスやイリ-品評会、そしてBSCA品評会など数多くの場面で高い評価を受ける。
栽培品種はアマレロブルボンのほかカツアイやアカイアなど。
標高1200m、農園面積は105ha。環境にも配慮し水洗処理後の水を浄化後牧畜に再利用したり、脱果肉後の果肉を肥料として再利用したりと環境にも優しい農園経営をしている。

*現地感想*
このミッションで訪問した農園の中でも、最も厳しい環境の中にありながら広大な農園を見事に作り上げていた。
サンタイネスといえば様々な品評会で高い評価を受けており、高品質なコーヒーを毎年輩出している。知る人ぞ知る、そのブランド力には定評がある。
そして今回、自分たちが乗っていた車が最も傾いた農園でもあった・・・。

 

セルトン農園:Fazenda Sertao

第一印象は、「良きブラジルの歴史を感じる」。
セルトン農園はセルトングループの名の由来となった最初の農園。
1891年より100年以上の歴史を持ち、カルモデミナスにおけるコーヒーの栽培の先駆け的存在。標高が高く降雨量も多い。
一方優れた牛のブリーダーでもあり「セルトンのジロランド」として有名で国内品評会では過去に8度も優勝をしている。
優勝した子牛は、1頭約2万US$の値がつく。
標高は1200m、農園面積は105haある。
栽培品種はアマレロブルボンのほかムンドノーボ、アカイア、カツアイなど。
30年以上の樹齢をもつものもあり今では農園の約 20%にあたる数量を毎年カットバックして収量維持をしている。
乾燥工程にも品質維持のため最善の注意を払う。
収穫後天日乾燥し機械乾燥(水分値60%→20%)、トゥーリャで休息させ(同20%→15%)再度機械乾燥させ(同15%→12%)最終的にトゥーリャで保管(12%以下)する。
これは乾燥によるコーヒー豆へのストレスを最小限に抑えるためである。

*現地感想*
訪問した日が休日だったこともあり、農園自体は残念ながら稼働していなかった。
しかし園内では代わりに「牛」たちが温かく出迎えてくれた。
実はこのセルトン農園、コーヒーの品質はもちろんであるが、その一方で優れた牛のブリーダーでもある。
敷地内には原生林が30%残っていて、コーヒーの生産と畜牛の割合が(50%:50%)となっている。
信じられないくらいにのんびりとした空気が流れていて、牛たちもストレスが少ない状態でリラックスしている印象を受けた。

 

Qualicafex(=クオリカフェックス社)

<訪問場所>

ブラジル連邦共和国サンパウロ州エスピリットサントデピニャル~サンパウロより北へ約250km人口4.5万人の町。
コーヒー精選機械メーカーピニャレンセの本社、工場があり住民の多数が従事している。

<概説>

現在ではコーヒー選別機械の世界シェア約40%を誇る1950年設立されたピニャレンセ社の関連会社。
モジアナ地区を中心とした提携農園の技術指導・品質管理・輸出・国際営業などを行う。
規模は中小でありながら高品質なコーヒーを生産する農園とパートナー契約を結びその価値を正確に反映させた透明性のある価格で世界各国のプレミアムコーヒーの輸入商社に輸出販売代行を行っている。
もちろん関連会社の企業性を最大限に利用し品質向上に向けた技術的な指導も積極的に行っている。
また別の関連会社でP&A Marketingがある。
これは生産国におけるコーヒー販促のためのコンサルティング業務を行う他、商品のパッケージデザインや広告業などを営む。
ブラジル政府からも信用厚く、同国のコーヒーに関する販促資料なども数多く手がける。

*現地感想*
カルモの町に比べてかなり町自体は大きく、発展している印象を受けた。
クオリカフェックス社は、おしゃれな町のオフィスという感じで実に洗練された空間があった。
いよいよこのミッション2回目となるカッピング。
ここでは7種のカップが用意されており、注目していた当社契約農園サンタアリーナの100年ブルボンとやっとのご対面。(自然と気持も高ぶる・・・。)
そして、カップテスターのマルシア女史の協力の元、カッピング終了。
カルモ社のカップと同様に7種ともハイクオリティーであった。
当店でも高い人気を誇る100年ブルボンは、ハイクオリティーなバランスに加え、クリーンですっきりとした味わい、後味にやわらかなコクを感じた。
そして、このミッションにおける自分の中での最高のカップが“サンタアリーナの50年ブルボン(PN)”であった。
ずば抜けた甘みと見事にまとまったバランス、控えめなのに活き活きとした酸には感動すら覚えた。
今回、現地で買い付けてきた“サンタアリーナ農園・コヘゴダオンサ50年ブルボン(PN)”が近日COFFEE WORKSに登場致します。乞うご期待を!!

 

サンタアリーナ農園:Fazenda Santa Alina(当社契約農園)

ポルトガル系のアドルフォペレイラディアス氏とイネスベルナリディオダシウバディアス氏には5人の息子がいる。
その内の2人ジョアキンとリンドルフォはサンタアリーナ農園の基となった最初の農園(総面積350ha)を1907年に持った。
その後、同じサンセバスチャンダグラマにある渓谷の手が付けられていなかった240haも知人から譲り受けた。
大霜災害を被った1918年、その兄弟は農園を二つに分けた。
その一つがジョアキンの息子であるジョアキンベルナルドカルバーリョ=ディアスによって継がれ現在のサンタアリーナ農園となっている。
そして2010年、農園主は4世代目(5代目)にあたるトゥカ ディアス女史。父親であるジョアキンベルネルデスより受け継いだ。
温泉が湧く町ポソスエカルダスにある。産地はカルデラの淵にあたる山岳地帯にあり標高は1100~1200m、保水性に優れた肥沃な火山性土壌。同山麓にはへクレイオ農園もある。
約360haのコーヒー農園には70世帯の永年労働者が住居を構え一社会自治体が存在する。
歴史は古く107年前にさかのぼる。
今も当時に植えられたブルボン(赤)がたくましく実を育んでいる。
一方新しい技術もいち早く取り入れ、1991年に他に先駆けてパルプドナチュラルを導入した。
年間平均5000袋生産。乾燥は天日→機械→寝かせ保管で、特に機械乾燥においては温度設定を高くとも40度以下におさえ(品温)またその熱源も香りを損なわないよう温水を利用した機会を用いている。
主要栽培品種はムンドノーボ(50%)の他、アマレロブルボン(40%)、アカイア、カツアイ、レッドブルボンなど。

*現地感想*
サンタアリーナ農園は、新しい技術と大自然が共存したような印象を受けた。
生産者のコーヒーへの革新的で真摯な姿勢。農園内には、永年労働者が住居を構え学校など教育施設も存在する。
また環境面にも配慮しており、ペットボトルやプラスチックゴミなどを袋に入れて、その風化していく様子を子供たちに教えている。
そういった取り組みや姿勢はまさにサンタアリーナ農園らしい。
そして話には聞いていたが、実際に対面した107歳のブルボンの木には驚いた。
通常コーヒーの木は約40年~50年くらいといわれているが、その倍の樹齢になっても活き活きとした実を育んでいる。(我々人間であればほとんど動けまい・・・。)
私がお気に入りの50歳のブルボンの木は偉大な107歳の背中を追いかけているかのように、そのすぐ下を走っていた・・・。頑張れ!! 

 

ハベーリョ農園:Sitio Ravelho

ハベーリョはイタリアにある海岸沿いの小さな村名。
そこに住んでいたコンチニ-家は1900年、職探しをする為にブラジルに戻ってきた。
彼らはサンパウロとミナスジェライス州の州境にあるコーヒー地帯でコーヒー男爵に使われ働き始めた。
つらい10年の労働を経て、1940年に農園主となった。
当初は数エーカー足らずであったが、現在ではバージェングランデ農園、ハベーリョ農園の2農園、合計300エーカーを抱える。共にコーヒー栽培には非常に適した土壌である。
2農園はモジアナ地域でも標高の高い位置にあり、それはブラジルの中でも有数の最高標高地域である。
この地域で産出されるコーヒーは国際的にも高品質で際立った特徴があることで知られている。
特にボディー、酸味に優れ、甘みをともなったフルーティーなカップには定評がある。
理想的な産地標高、品質主義のもと栽培されている栽培種、持続可能性のある栽培、そして最も重要な要素である良い労働環境を保持すること、これらがとても素晴らしいスペシャリティーコーヒーを生む結果につながっている。

*現地感想*
のどかな景色の中に整然と並んだコーヒーの木々があり、広大なパティオの上には、太陽の光をいっぱいに浴びた“スーパーボイア”があった。
漂ってくる香りには深い甘みがあり、その姿はまるで宝石のようであった。
チェリーが過完熟しているので、その甘い香りに誘われて虫たちが集まって来ているのも他の天日乾燥中のパティオにはなかなか見られなかった現象である。
そして、前からやってみたかった「ぺネイラ」を経験することができた。
これが結構難しく、かなりの“へっぴり腰”姿をさらすこととなった。
また一ついろんな意味でコーヒーの新たな世界と厳しさを知ることとなった・・・。

 

アルトアレグレ農園:San Jose do Alto Alegre

ハベーリョ農園と同じく、エスピリットサントデピニャル近くの山岳地帯であるジャクチンガに位置する。
標高1200m~1280mとブラジルとしては高い標高であり、産地標高が生み出す「長期熟成完熟」により心地よい酸味とボディー、そして甘みのバランスが絶妙なカップを持つ。
特に標高1250m付近に広がるアマレロカツアイが極めて高品質。

*現地感想*
アルトアレグレ農園は、このたびのミッションで最後の訪問先となった。
風景が絵になる農園で大規模な機械乾燥の設備、アフリカンベッドも初めて見ることができた。
最後の訪問先となり、少し寂しい気もしたが、それ以上に満足のいく最高のミッションであった。
また農園主の方からは、バーベキューをご馳走になり本当に幸せな時間を過ごすことができた。